月も魚も遠いけど。

ブロマンス・BL小説をメインに執筆する瀬名那奈世が創作や生活について語ります。

高村薫『李歐』感想【BL・ブロマンス好きさんにおすすめの小説】

こんにちは! 瀬名那奈世です。

今回は高村薫さんの長編小説『李歐』を読んだ感想です。

ブロマンス、BL好きさんにはぜひ読んでもらいたい作品!

 

〇高校生の時に読んだ思い出

 

実は私、高校生の時にこの本を読んだことがあります。確か、学校の図書館で借りました。

その時の印象は、とにかく”桜”でした。

この本には『李歐』(りおう)という美青年が出てきます。彼の美貌と作中で描写される桜の美しさが絡み合って、とても素敵だなあと思った記憶があります。

 

私は滅多に本を再読しないのですが、年明け頃に何の前触れもなくこの本のことを思い出して、無性に読みたくなってしまって……。古い本なので地元の本屋さんには売っておらず、少し遠出した時に大きい丸善で買いました。

 

一度読んだ本をどうしても読み返したくて買ったのは初めてでした。具体的なきっかけは自分でもわかりませんが、高校生の頃からずっと心に残り続けていた物語だということは、間違いありません!

 

〇ストーリー、全く覚えてなかった笑

 

そして読み返して気づきました。私、全くストーリー覚えてなかった!

超超超ざっくりまとめると、大学生の吉田一彰が、子どもの頃近所の工場で働いていた中国人労働者を探す過程で、右翼だとか左翼だとか共産主義だとか(時代は20世紀後半です)のゴタゴタに巻き込まれていく話なんですが、高校生の私には難しかったんでしょうね。今でも難しいし結局よくわかってません……。色々違ったらごめんなさい!

 

でもぶっちゃけ、その辺がよくわからなくても最後まで楽しめます。スケールが大きくてワクワクするし、見所は一彰と李歐の関係性ですから……!

 

〇一彰と李歐

 

そしてここが本題です。主人公の一彰と李歐の関係が超・萌えなんです!

 

まず、一彰は李歐にベタ惚れです。二人が初めて対面するのはナイトクラブの裏口なんですが、一彰は最初から李歐の一挙一投足に魅了されています(このシーンのことは唯一、十年近くの間ずっと覚えていました)。そして作品を通して、とにかく一彰は李歐のことを『美しい男』と言い続けます。

一彰自身もイケメンで甲斐性があるので、大変な人生なりにいつも寄り添ってくれる人がいます。でも心の中ではいつも李歐のことを想っています。

 

そして李歐。

こっちはとにかくスケールがでかい……! 最初っから一彰に「お前のこと気に入った」的なこととか「惚れた?」とか言ってきます。外国育ち特有のジョークっぽくも見えるんですが、彼は彼なりに一彰に執心しているようで、とにかく愛がデカいです。どんだけ愛がデカいかは、最後まで読んでもらえればわかります。ネタバレになっちゃうんで言えないのが残念っ!

 

昔の作品なのもあって、二人が恋愛的に結ばれることはないんですが、少なくとも一彰の李歐に対する想いは恋だと思います。実際「恋しい、恋しい、」って言ってるシーンありますし笑 もしくは、恋よりも激しい何か(?)

 

それは、一彰自身の性格によるところが大きいと思います。

 

〇一彰もまあまあヤバいやつ

 

あらすじでは『平凡なアルバイト学生』とか言われてる主人公の吉田一彰(22)ですが、これ嘘です。こいつ、まあまあヤバいやつですよ……笑

 

そもそもしょっぱなから、大学の教授の奥さんと不倫関係にあります。自分のことを『淫乱』だと認めていて、その場の勢いですぐに女性と関係を持ちます。

 

バイト先の一つは裏社会の人たちが出入りするナイトクラブだし、もう一つのバイト先では薬物漬けになった先輩をしれっと罠にハメてお縄にしちゃうし、なぜか最初っから拳銃組み立てられるし……。

 

いくら時代が違うからって、これが『平凡』でたまるかーっ笑

 

頭も顔も面倒見もよくて、どこに行っても人に好かれるのに、心の底がいつも乾ききっているような人なんだと思います。だからこそ、圧倒的な美しさとスケールの大きさで自分を魅了してくれる李歐に恋焦がれるんでしょうね。

 

〇美しく温かい春の景色

 

最後に、私が何気に好きなシーンを紹介します。それは、一彰の過去編です。

物語途中で一彰の過去編が挟まるんですが、そこで描かれる風景がとてもいいんです。舞台は大阪のとある町工場で、工場主も従業員もほの暗い事情があるんですが、皆幼い一彰のことをとても可愛がってくれます。その温かさが春の景色と共に美しく描写されていて、胸を打ちます。

 

こんな描写ができるようになりたい……とつくづく思いました!

 

『No.6』とか『BANANA FISH』が好きな人に読んでほしい!

 

というわけで、BL・ブロマンス好きの人にはぜひ読んでもらいたい『李歐』ですが、あさのあつこさんの『No.6』吉田秋生さんの漫画『BANANA FISH』が好きな人には特におすすめです! 『主人公が圧倒的カリスマに惚れる』という構図が同じなので、刺さるのではないでしょうか?

 

古い本ですが、よかったらぜひ読んでみてください!