月も魚も遠いけど。

ブロマンス・BL小説をメインに執筆する瀬名那奈世が創作や生活について語ります。

感想の感想を書く【フィンディルさんの感想に感動した話】

〇フィンディルさんの自主企画に参加した!

 

こんにちは! 瀬名那奈世です。

 

皆さんは『フィンディルの感想』をご存知でしょうか?

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このサービスは名前の通り、フィンディルさんが小説の感想を書いてくださるものです。

 

気にはなりつつ、なにしろ長編執筆に精一杯で、しかも自作に指摘有りの感想をもらうのがなんだか怖いような気もして、一歩踏み出せなかった瀬名。

 

しかしなんと!フィンディルさん、カクヨムで『あなたの小説の方角はどちら?』なる自主企画を開催してくれたんです!

 

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今回で3回目らしいこの『方角企画』。

 

5000文字以内の短編を書き下ろしさえすれば参加できて、フィンディルさんから感想を書いてもらえるかもしれないなんて……すごい!

 

3月いっぱいで退職し(そうそう、退職したんですよ)時間に余裕があった私は、その場の勢いで短編『ハートビートをさらって。』を執筆しました。

 

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カクヨムで自主企画を選べばいいだけだから参加も簡単。

 

他の参加者さんとの交流を楽しみつつ過ごしていると、ついにフィンディルさんから感想が!

 

ハートビートをさらって。/瀬名那奈世 への簡単な感想 - あなたの小説の方角はどちら?(フィンディル) - カクヨム (kakuyomu.jp)

 

急いで読ませていただき、にっこり。すーっごく嬉しい!はっぴーはっぴーはっぴー♪(猫ミームにハマったっきり地味に抜け出せていない瀬名)

 

既にカクヨムの方で途方もなく長いお礼コメントを残してあります。しかしフィンディルさんの感想のすごさまでは伝えきれず(さすがに長くなりすぎると思って泣く泣く……)、だったら場所を変えて気が済むまで語ろう!と思って、こちらにやってきました。

 

『フィンディルの感想』というサービスの感想ではなく、あくまで『方角企画』における『簡単な感想』への感想ですが(うーん、ややこしい)、フィンディルさんの洞察力の高さ、思慮深さ、温かさはどんな時でも変わらないはずです。

 

お時間ある方、よろしければお付き合いください。

 

 

エスパーですか?!

 

まず最初に驚いたのが、フィンディルさんの洞察力の高さです。

 

それを説明するにあたり、まず私が、どういうスタンスで『ハートビートをさらって。』を執筆したかを説明しますね。

 

ずばり、フィーリングです!!!!

 

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フィンディルさんの方角企画に参加したくて、手グセ100%で書き下ろしました。良くも悪くも私らしいです。そうです私は元々こういうのを書く人間なんです……。

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これは『ハートビートをさらって。』の作品紹介に自分で書いた文章です。

 

ライトノベル・エンタメ小説系の公募を目指す者として、特にこの一年、かなり『キャラクター性』や『物語の展開』を意識し、元々好んで執筆していた短編からも離れ、中・長編の執筆に打ち込んできた瀬名。

 

筆力がついてきて嬉しい。自分の文章が確立されてきて嬉しい。でもなんか……なんか……違う……!

 

なにか、根本的なところで、自分のイメージする一般的な『エンタメ小説』と完成させた作品がズレるんです。その『ズレ』が一概に悪いものだとも思いませんでしたが、なぜズレるのか、そもそもそのズレとはなんなのか、という疑問は頭の片隅に常にありました。

 

そして今は、14万文字で完結予定とかいう地獄のような長編小説『バベル』を絶賛執筆中(現在7万6000字まで下書き書けましたあ……)。

 

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たまの短編くらい、好き勝手書きたい!ありのままの自分で!

 

そういう心理状態で生み出されたのが『ハートビートをさらって。』だったわけです。

 

作者の開放的な心理状況とは裏腹に、案の定ずいぶん『湿っぽい』短編が出来上がりました。自分的にはすごく好き。でも、でもなあ……みたいな自嘲が、あのひねくれたコメントだったわけです。

 

 

〇結論から言うと、フィンディルさんはこの『ズレ』の正体を言語化してくれました。

 

以下、フィンディルさんの感想からの引用です。

 

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真北ならもっと出会いと別れにメリハリをつけるものと思いますが、本作はそのメリハリが淡いように感じたのでそこに西の香りを感じました。人と人との人生が交わりそうで交わりきらない、そんな生々しさを残したうえでのフォーマットという印象です。

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『真北』『西』というのは、『方角企画』における作品の方向性のことです。ここではざっくり【真北=エンタメ寄り】【西=純文学寄り】くらいの認識で大丈夫です(詳しくは企画ページにとんでみてください。面白い発想です)。

 

『ハートビートをさらって。』は【北北西】だと言うフィンディルさん。この作品になぜ西(純文学的)要素を感じるかという説明の中で出てきたのが、引用部分の言葉。

 

『メリハリが淡い』という表現を読んだ瞬間、これだ!と思いました。

 

【私が想像するエンタメ】

=キャラ描写が『はっきり』している、キャラの感情表現が『はっきり』している、ストーリー展開が『はっきり』している、オチが『はっきり』している……

 

【私が書いた作品】

=キャラに『目立った特徴の描写がない』、キャラの感情表現を『ぼかしがち』、ストーリー展開に『起伏が少ない』、オチを『最後まで書かない』……

 

こりゃ確かに、『ズレ』てて当たり前!笑

 

でも実は、この『メリハリが淡い』書き方は、全部自分が好んでやっていたものだったんです。

 

感想へのコメントでも書いたんですが、私は結構、物語の登場人物が自分と分離して感じられるタイプです。

 

涙を流して「悲しそう」に見えても、そのキャラの本当の心の内までは究極的にはわからない。本当に「悲しい」のかもしれないし、「悔しい」のかもしれないし、もっと複雑な何かがあるのかもしれない……もちろん作者としてそこは掘り下げていくんですけど、現実世界で他者を完全には理解できないように、物語のキャラクターにも、作者にすら理解できない心の領域が必ずあると思っています。

 

なので、そういう複雑で曖昧で様々な可能性をはらんだ登場人物を必要以上にカテゴリー化するのに対して、私はかなり抵抗感があるんです。

 

『ハートビートをさらって。』でいうと、それは主人公『まひろ』のプロフィールでした。

 

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睡眠障害を患う『まひろ』が夜の公園で出会ったのは、ジャングルジムのてっぺんで歌う少女だった】

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これが作品のあらすじになります。あらすじは最初に目を通すものなので、読者さんの大半がまひろ=睡眠障害という図式で読み進めるはずです。

 

しかし私にとっては、まひろは最初から睡眠障害だったわけではないんです。

 

まず初めにベッドの中でうだうだと考えてしまう女の子の姿が頭に浮かんで、その子が考えることに辟易して起き上がり、ゆっくりだけど慣れた足取りで公園にたどり着いて……。

 

ああきっとこの子は毎晩公園に行ってるんだろうな、意識はあるみたいだから、夢遊病というよりは睡眠障害かな、病院に行って診断を受けているかは微妙だけど、あらすじで『わかりやすく』伝えるためには、やっぱり『睡眠障害』って言うしかないなあ……。

 

みたいな葛藤があったわけです(ちなみにフィンディルさんは恐らく、その辺りの順序も直感的に感じ取ってらっしゃいます。すごすぎる)。

 

 

〇って話を、私は今までどこでもしてないんですよ!!!!!!

 

ネット上どころか、リアルですら話したことがないんです!!!!!!

 

なのになんですか、この一文は……!!

 

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歩調を合わせて納得感を損なわず読者を卒なくアテンドする“キャラクター”ではなく、その人のリズム感で物を考え生きていく有機的な人間としての見え方につながるような筆致であるように感じています。

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頭の中覗かれてるかと思いました……びっくり……。

 

そうそう、私はこういう捉え方で作品を書きたかったし、書いてきたんです。

 

小説の文章ともしかしたら少しのコメント返信、おまけみたいなあらすじを読んだだけでここまで作者のことがわかるって、すごすぎませんか。むしろ私は、自分のことなのにこれっぽっちもわかってませんでしたよ?!

 

洞察力すごすぎです。こんなに相手のことがわかっちゃうって、フィンディルさんには世界がどういう風にみえてるんでしょうか……。

 

 

〇フィンディルさんは思慮深い

 

そして、フィンディルさんの感想は、とても思慮深いんです。そもそも指摘有りの感想活動を続けるって、それだけで私はすごいなあと思います。

 

だって、ひとの作品にコメントするのって、基本的にものすごく気つかいません?

 

私は普段なかなか他の人の作品を読めず、いけないなあなんて思うのですが、今回の方角企画では自作を結構読んでいただいたのもあり、私も頑張って読んでみよう!コメントしてみよう!モードでなるべく参加してみました。

 

読んで『いいね』するだけでなくコメントまで、となると、楽しいんですけど、その楽しさとはまた別の話、普通に大変です。

 

まず、「自分の作品解釈は本当に正しい(本文と齟齬がない)かな?」と私はすごく考えちゃいます。基本的に勘違いが激しい人間なので、気を緩めるとすーぐに妄想が膨らんで、本編と矛盾しかねない認識をしてしまっていたり……。

 

そして、ほめるにしても、「この文章の書き方、誤解されないかな?」「ほめたいんだけど、嫌味っぽくなってないかな」「作者の意図をちゃんと踏まえてほめられてるかな」と心配になり。

 

他にも、誤字はないか、言葉遣いは馴れ馴れしくor他人行儀すぎる感じがしないか、他の人へのコメントと量やテンションに差があり過ぎないか……などなど。

 

ほめるだけでこんなに大変なのに、的確な指摘までしてくれるフィンディルさん。しかも、その指摘された箇所に対してちゃんと、「なるほど」って納得できるんです。

 

ひとつの作品を過不足なく読み解いて、良いところや的確な改善点を見出し、相手が受け取りやすい言葉遣いでわかりやすく伝える……それがどれほど大変なことか。

 

すごいなあと、心から思いました。

 

 

〇なにより、温かい

 

洞察力が高くて、思慮深いフィンディルさん。そしてなにより、温かい人なんだと思います。

 

私はフィンディルさんと特別深い交流があるわけではなく、Xですこーしお話をして、自主企画に参加させていただいて、自作に一度感想をいただいた程度の関係です(むしろ、それだけなのにこんなに激重長文記事を錬成してしまって、なんだか申し訳ない……)。

 

だけど伝わってくるんですよ。温かいお人柄が。

 

作品は読んでもらえるだけで嬉しいのに。まさかあんなに真摯で温かい感想をいただけるとは思ってもみませんでした。無料なのに。

 

お金のこと云々っていうのは、なんだか色々誤解も生みそうだし、あんまり言いたくないんですが、ここではあえて言及したい。

 

フィンディルさんは、無料だから、『簡単な感想』だからって手を抜かずに、自分の使える時間の中で精一杯、私の作品や執筆スタイルに向き合ってくれました。お金がどうこうではなく、その姿勢自体がとても嬉しかったです。

 

フィンディルさんのサービスについて私はそこまで詳しく知らないのですが、どうやらpixivFANBOXでの支援も受け付けているそう。

 

自分がお金をもらうこともある分野(=プロ意識を持って熱心に取り組んでいる分野)で、かけられる時間など制度的な違いはありつつも、無料でも有料でもできる限りの誠実さで臨む……それは、口で言うよりもずっと、ずーっと難しいことだと思います(某デパートコスメ店舗では、買ってくれそうなお客さんと買ってくれなさそうなお客さんとで店員の態度が明らかに違う、なんて噂も聞きました。店側も商売なのでその態度は一概に悪いものとは言えませんが、やはり分け隔てなく熱心に対応してくれる企業を応援したいと思うものです)。

 

また、自主企画に参加されてる皆さんは『フィン感』の常連さんが多そうな印象でしたが、小説を書いたりコメントを書いたりするのを活発に楽しんでいらっしゃるのが伝わってきました。

 

そんな様子を見て、この参加者さんたちは、フィンディルさんの温かい感想に励まされて、小説を書いたり読んだりするのが今までよりももっと大好きになった経験があったのかもしれないな、なんて思ったり。

 

少なくとも私は、フィンディルさんの温かい感想を読んで、自分の作品が、執筆スタイルが、小説を書いたり読んだりすることが、前よりもずーっと大好きになりました!

 

この経験はこれから小説を執筆していく上で貴重な財産になると思います。フィンディルさん、本当にありがとうございました!

 

 

〇方角企画は5/6まで!

 

というわけで、長い長い『感想の感想』にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

思うがままに書いていたら自分語りもかなり多くなってしまいました。すみません。

 

つたない感想ですが、少しでも感動が伝われば嬉しいです!

 

記事内で言及した『方角企画』は 2024年5月6日 までの開催だそう。

 

参加者さんとの交流もとても楽しいです。気になった方は、企画内容を確認の上、ぜひ参加してみてください!

 

kakuyomu.jp

 

そして、ちまちま感想を書いているうちに、フィンディルさんからコメントへのお返事が。

 

『フィンディルの感想』では、この方角企画における感想が『簡単な感想』だと思えるくらい、もっともーっと丁寧な感想を書いてくださるそうです!

 

確かに、なんだか量も質もすごいぞ……?(『フィンディルの感想』でどんな感想が書かれているかも、こちらから読めます。もう一度リンクを貼っておきます!)

 

t.co

 

迷った時、悩んだ時、私も利用してみたいなと思いました。気になった方、ぜひ覗いてみてください!