月も魚も遠いけど。

ブロマンス・BL小説をメインに執筆する瀬名那奈世が創作や生活について語ります。

自創作を語る①【月の沙漠】について

文学フリマ東京38に向けて自創作を語りたい!

 

こんにちは!瀬名那奈世です。

文学フリマ東京38が5/19(日)に迫ってきました…!!

 

 

文学フリマ東京38の概要

文学フリマ東京38 – 2024/5/19(日) | 文学フリマ (bunfree.net)

 

 

 

私は今回【く-10】にスペースをいただいております。BLの新刊2冊に加えて既刊も2冊持っていきます。

 

 

瀬名のウェブカタログ

瀬名那奈世 [文学フリマ東京38・小説|BL] - 文学フリマWebカタログ+エントリー (bunfree.net)

 

 

 

いつかやりたいなーとずっと思っていた自創作語り。文学フリマ東京38に向けて、この機会に一作品ずつ紹介してみたいと思います!

 

 

◯『月の沙漠』はブロマンス×溺愛

 

さて、タイトルにもある通り、今回は既刊『月の沙漠』について語っていきます。

6万文字弱程度の中編ブロマンス作品になります。文庫本『月の沙漠』に収録。

 

文学フリマ東京38】ウェブカタログから商品紹介

「月の沙漠」瀬名那奈世@文学フリマ東京38 - 文学フリマWebカタログ+エントリー (bunfree.net)

 

通販(この他、PDF版もあります)

月の沙漠【文庫版】 - つきのさかな - BOOTH

 

 

あらすじはこんな感じ。

 

 

【あらすじ】

「大丈夫だよ。俺は自分が寒いから、今ここにいるんだ」

中学・高校時代を共に過ごした堅羽智戈(かたはともか)と相生充(あいおいみつる)。二人の日常は堅羽の大学進学をきっかけに大きく変化する。

 

 

堅羽、充、華(充のいとこ)という三人の視点を行き来して、高校三年生の2月〜大学一年生の1月までの一年間を描きます。

 

 

瀬名的にはこの話、かなりの溺愛物語だと思ってます。

 

 

堅羽→充の愛が重い。

 

 

ブロマンスなんで恋人関係ではないんですけど、堅羽は人間としてとても充のことが好きだし、大切にしています(育った環境的に、堅羽の思考がデフォルトで人に尽くすタイプ、というのもある)。

 

 

その愛情に、充が本当の意味で気づけるか、受け取ることができるか、というところが物語の主軸ですね。

 

 

◯現在、長編バージョンを執筆中

 

実はこの話、角川キャラクター文芸大賞に出そうと思って四月末に4万文字の増量キャンペーンを勝手にやっていました(ブロマンス×溺愛という表現も、キャラクター文芸大賞のテーマ賞から)。

 

結果、なんとなく増量はできたんですが、冷静に考えてカテゴリーエラーっぽいんで応募は見送りました。

 

現在は別の賞を見据えて、長編バージョンの推敲に取り組んでおります。

 

そして、この作品と向き合えば向き合うほど、「私はこういうのが書きたいんやー!」と自分の原点のようなものを感じたので、自分の創作観と絡めてもう少し語っていこうと思います。

 

 

◯人間としてのキャラクターを書きたい

 

自作に登場するキャラクターは、掴みやすさを意識しつつも、ひと言で語れない方が好きです。

 

例えば、堅羽は充を溺愛していますけど、彼に対する口調は結構雑です。お母さんみたいな小言も言うし、なんでもかんでも最初からワガママを聞いてあげたりはしません。

 

最初の方は特に、堅羽本人にも多分、『溺愛』しているという自覚はあまりないと思います(執着しているという認識はありますが、素直に『好き』とは言い切れない何かがありそう)。

 

でも、結局最後は折れてあげたり、東京生活でどんなに疲れていても会いにいったり。

 

傍から見てれば「どんだけ好きなんや」って感じですよね笑

 

そういう、自己認識と他者認識のズレを書くのが好きだったりします。

 

他にも、華から見た充と堅羽から見た充の印象が少し違ったり。堅羽と充の前ではすごく明るくて前向きに見える華が、女友だちの前では少しクール系だったり…。

 

同じキャラクターだけど、相手によって少しずつ態度や与える印象が違います

 

現実の人間でも小説のキャラクターでも、「この人意外とこういう所あるんだな」みたいな瞬間があると、なんか嬉しくないですか?笑

 

『月の沙漠』は視点が三つあるので、ひとつの出来事や人物を色々な角度から見る楽しさがある気がします。

 

◯日常にひそむ愛を書きたい

 

堅羽くんの愛を感じるシーンが多々ある今作ですが、作者的お気に入りは充に冷やし中華の錦糸卵を作ってあげるシーンです。

 

『堅羽はさっさと冷蔵庫に向かうと卵を取り出した。Tシャツ越しに浮かび上がった肩甲骨がスルスルと滑らかに動く。広い背中は、少し痩せたような気がする。』

 

↑本文より抜粋(充視点)。

 

高校時代からずっと、堅羽は充のために料理をしてきました。疲れていても、自分の日常が上手くいっていなくても、堅羽にとって充のために料理をすることは当たり前なんです。

 

愛ですね…。

 

誰かのために料理をする人の背中とか、見抜いた嘘にあえて触れない気遣いとか、そういうさりげない、滲み出るような愛情が大好きです。

 

他作品に比べて派手な展開がない分、ささやかな愛情にあふれているのが、この『月の沙漠』かなあと作者的には思います。

 

 

◯ちょっとした言葉や仕草・行動で、世界の彩りが変わる瞬間を書きたい

 

これはもう、瀬名の作品に昔から共通している信念というか、癖というか。

 

大きな変化より、そのキャラクター自身にだけ価値があるような、小さな変化を描く方が好きなんです。

 

自分の本当の気持ちに気づいたり、今までどうしてもできなかった些細なことがふとできるようになったり(ネタバレになるのであまり話せませんが…)。

 

『月の沙漠』は、充が『愛を受け取る』話であると同時に、堅羽自身が『自分が与えている愛に気づく』話でもあるかもしれません。

 

自分の『好き』に気づく瞬間って、すごく特別だなあと思います。その輝きや喜びと、以前の自分とは変わってしまうことへの少しの寂しさを、結局いつも描いているような気がします。

 

 

◯『月の沙漠』というタイトルの意味

 

最後に、瀬名的タイトルの解釈を。

 

と言っても、『これが正解!』というわけではなく、こんなニュアンスかな〜というふわっとしたものですが…(タイトルはいつも直感で決めてしまうので)。

 

私的には、『月の沙漠』=『孤独な社会』です。

 

そもそも人間は、誰かと完全に同じになるとか、誰かを完全に理解するとか、できないですよね。

 

どれだけ他者を愛しても、夜空にぽっかりと浮かぶ月のように、本質的にはどこまでも孤独です。

 

特に、単身東京に飛び出していった堅羽は、そんな孤独や沙漠のように厳しい社会を、充や華よりもひと足先に体験します。

 

『月の沙漠』=『孤独な社会』を、堅羽は、充は、華は、どういう風に生きていくんですかね。

 

そんなところにも思いを馳せながら読んでもらえると、作者的にはとても嬉しいです!

 

 

◯とはいいつつ、ツッコミどころも…。

 

などと、良さげな感じで語ってきましたが、今読み返すと細かいツッコミどころもちらほら…。

 

買っていただいた&買っていただく方がいる手前、あまり言うのもどうかと思ったんですが、罪悪感に耐えられないので言わせてください。

 

誤字誤植が…気になる…!!

 

特に謎の『。』が気になります。本当に申し訳ない。お前、どうして増えたんだ????と作者も頭を抱えております(見ればわかります)。

 

実は新刊『ライン上のキッカ』でも、カッコの末尾になぜか『。』がついてしまった箇所が今時点で2箇所ほど判明しています。

 

『月の沙漠』をふまえて、かなり気をつけて何回もデータチェックをしたはずなんですが…本当に申し訳ない…!

 

ただ、毎回精一杯のやっていることだけは理解していただけると嬉しいです。こういう細かいのがマジで苦手なんです…。

 

校正さん、外注してもいいんでしょうけど、単価が上がるのは避けたくて。私的同人活動の限界は「一人でできる」なんです。すみません。

 

半年前に制作した『月の沙漠』よりは、新刊の『ライン上のキッカ』の方が確実に綺麗な原稿になっているので、この辺は自分のスキルを上げるという方針で引き続き精進したいと思います。

 

 

◯デザインはお気に入り!

 

中身の体裁については若干の悔いが残りますが、装丁はとても綺麗ですよ!いいデザインです。自分で言うのもなんですが笑

 

また、『チョコミントはおあずけ』との同時収録は、今の在庫分が最後になると思います。

 

『月の沙漠』の長編バージョンは、いずれカクヨムに全編公開したいんですけど、いつになるか未定でして。

 

同様に、長編バージョンの紙媒体での収録も、現時点で未定です(あまりにも早く中編バージョンがはけてしまったら考えますが、その際もタイトルを若干変更予定です)。

 

『月の沙漠』をすぐに読みたいよー!って方は、この機会に手に取っていただけるととても嬉しいです。

 

ブースに見本誌もありますので、ぱらぱら捲るだけでも大歓迎!紙の綺麗さを見てほしい…!

 

ご縁がありましたら、お待ちしております♪