月も魚も遠いけど。

ブロマンス・BL小説をメインに執筆する瀬名那奈世が創作や生活について語ります。

自創作を語る⑥【神春伊咲の生業】について

◯第6回は【神春伊咲の生業】について
 

こんにちは!瀬名那奈世です。

 

『自創作を語る』第6回は、長編ブロマンス小説【神春伊咲の生業】について語っていきたいと思います。

 


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短編BL小説『ライン上のキッカ』について語った第5回はこちら ↓

tsukimosakanamo.hatenablog.com

 

 

【神春伊咲の生業】は瀬名が初めて書いた長編小説になります。2024年のノベル大賞で、一次選考を通過させていただきました。

 

残念ながら二次は通らなかったんですが、その応募原稿を修正し、文庫サイズの同人誌にしたのが、【神春伊咲の生業】になります。

 

 

8/23(金)23:00〜のwebオンリーイベント【創作BLオンリー関係性自論5】の新刊です!

 

pictsquare.net

 

 

雰囲気がわりとBL に近かったり、イベント限定のオマケ短編が作者的には超超超お気に入りだったりと、伝えたいことがたくさんあるので、今回も元気に自創作語りをやっていきたいと思います♪

 

 

◯そもそもどういう話なの〜?

 

【神春伊咲の生業】の大まかなあらすじはこちらになります↓

 

<あらすじ>

人の魂を取り込んでなりすますことができるという、にわかには信じがたい体質をもつ神春伊咲(かんばるいさき)。彼に救われた経験がある東雲紫陽花(しののめあじさい)は恩返しをしようと彼の元で働くが……?

 

 

ざっくりいうと、伊咲に救ってもらった紫陽花が、今度は彼を救いたいと奮闘する話です。

 

 

伊咲は海外のカリスマ俳優ばりのイケメンで、誰にでも優しい、人たらしな男です。

 

ところが彼は、そんな完璧な外見とは裏腹に、自分に向けられる愛情にすごく鈍感だったり、特殊な体質のせいで体調面にも影響を受けていたりと、内側に多くの問題を抱えています。

 

一方紫陽花は、新卒から3年間、小学校の教員をしていた過去をもちます。激務で精神に異常をきたし、深夜徘徊していたところを、伊咲に助けられました。

 

伊咲に恩返しがしたいと思った紫陽花は、教員を退職し、伊咲の元で働きます。そして、とある依頼をきっかけに、伊咲のもつ暗い過去に気づき始めます。

 

<本文p62>

 ごくごくと動く喉元から目が離せなかった。サイドライトの光に浮かび上がった伊咲さんの筋ばった首には、赤みを帯びた環状のアザが蛇のようにまとわりついていた。

 俺の視線に気がついたのだろう。伊咲さんはペットボトルから唇を離し、少し気まずそうに顔を背けて、右手の指先でアザをなぞる。

 

 

ちなみにこの二人、地味に歳の差でして。伊咲が今年で三十一歳、紫陽花が二十六歳です。

 

二人とも大人としての振る舞い方や距離感をある程度わかっていて、特に伊咲は、問題を抱えながらも、もう既に彼なりの生き方が定まってしまっている歳なんですよね。

 

 

そこに、二十代半ばという、大人にも子どもにもなりきれない年齢の紫陽花が、「伊咲さんはどうしてもっと自分を大事にしてくれないんだ!」と立ち向かっていく。今作はそんなお話です。

 

 

『五歳差』という年齢感がもたらす絶妙な踏み込めなさとか、お互いがお互いを眩しく感じる気持ちとか、その辺の微妙な機微も、このペアの魅力だと思っております。

 

 

◯救い、救われること

 

【神春伊咲の生業】のテーマは、あえて述べるなら『救い』です。

 

私が個人的に、このテーマを強く感じるのは、こちらのシーンです↓

 

<本文p139>

自分ばかりだ。俺はいつも、自分ばかりもらっているような気がする。

 

 

これは中盤で出てくる紫陽花のモノローグです。車椅子の少女・藤木愛(ふじきまな)と対話する場面です。

 

紫陽花はこの時、愛の介助人として美術館に来ています。つまり、愛を「助けている」はずの紫陽花が、「もらってばかりだ」と感じるシーンなんです。

 

 

私が伊咲と紫陽花のペアを好きすぎて、ついキャラ萌え的な話ばかりしてしまうんですが、お話の土台はこっちです……!笑

 

 

そもそもメインの伊咲と紫陽花が、「救い、救われる」構図にあって、その前提ありきの関係性が二人の間には築かれているので。

 

 

伊咲と紫陽花は、どっちがどっちを救ったのか?

相手を「救った」と思った時、本当に救われているのは誰なのか?

 

 

そんなことを考えながら、本文の執筆と推敲に取り組みました。

 

 

自分で言うのもなんですが、結構な光属性の話だと思います。温かい話やハッピーエンドが好きな方には特に、楽しんでいただけるかと!

 

 

◯紫陽花にとっての伊咲、二人の関係性

 

Xでもポストしたんですが、作者的には伊咲と紫陽花は、かなりラブに近いブロマンスをいってる気がします。

 

 

紫陽花の中には明確に「伊咲が特別」という自覚がありますし、伊咲は伊咲で、年齢差や紫陽花の言動に振り回されつつも、「紫陽花が自分のそばにいてくれるうちは、彼を大事にしたい」という気持ちがちゃんとあるんですよね。

 

<本文p65>

「おやすみ、東雲君」

 ふっと柔らかい笑いの後、温かい声と同時に大きな手のひらが伸びてきて、視界を奪われた。遠慮がちに俺の前髪をかき混ぜた体温はすぐに遠ざかり、やがてこぽこぽとお湯を注ぐ音が聞こえてくる。

 

 

じゃあなんでラブにならないんだ、といったら、ここが本当に、私の癖(へき)なんですが、「お互いがお互いを不可侵な存在として捉えてしまってるから」だと思うんです。

 

 

紫陽花→伊咲の矢印は多分、どこまでいっても「自分を救ってくれた恩人」なんです。伊咲の言動に癒されたり、好きだなあと思ったりしても、それが全部、恋愛感情ではなく「自分は今、救われている」という自覚に行きついちゃう。

 

だから自分の執着は信仰心だと思っているし、時々恋愛的な執着を自覚しても、気の迷いとして排除してしまう(神さまと恋愛はできないので)傾向にあるのではないかと。

 

 

一方、伊咲は伊咲で、人と深く関わることに対する諦念があるので、紫陽花のことは恋愛対象というよりは、『可愛い弟』として捉えている節が強いです(特に前半)。

 

年齢の離れた人、特に歳下って、基本的に微笑ましいじゃないですか。ああ、この子にはこの子の世界があるんだなあ、みたいな。

 

そういう眩しさを、伊咲は紫陽花に感じているんだと思います。

 

 

◯一歩近づいた二人を描く、 【創作BLオンリー関係性自論5】限定オマケ短編

 

でもじゃあ、この二人は永遠に恋愛関係にならないのかと問われれば、「可能性はなくはない」くらいだと私は思っています。

 

 

というのも、この二人って元々は赤の他人なので、心身の距離が近づいた時の『気恥ずかしさ』みたいなのをちゃんと感じてるんですよね。

 

<本文p55>

「窓側は少し寒いので。東雲君、代わりに使ってもらってもいいですか?」

 入り口側のベッドに腰掛けながら、伊咲さんが滅多に見せない上目遣いで言う。言葉が出なくなってしまった俺は、彼の提案を渋々受け入れた。

 

 

<本文p134>

 ちらりと見上げると、ハリのある首筋が存外近くにあった。表情を見ようと少し下がる。俺から顔を背けるように横を向いている伊咲さんだが、耳が真っ赤だ。

「伊咲さん?」

「あのね、東雲君。いい大人が他人の襟元を断りもなく開けて、息がかかるような距離でジロジロ観察するのは辞めなさい」

 

 

これってつまり、相手を意識する土台はあるということ。だから、伊咲が紫陽花に一歩踏み込めるようになった本編後なら、もしかしたらもしかするのでは?というのが作者的見解です。

 

 

……で、ですよ。

 

 

書いちゃったんですよ、後日譚……!!

 

 

今回【神春伊咲の生業】が新刊として出る【創作BLオンリー関係性自論5】は、ウェブオンリーのイベントです。

 

通販利用になるので、送料とか梱包代とか入れると、文学フリマなどの現地イベントに比べて割高になるんです。

 

それが申し訳なくて、新刊にだけでもなにかオマケをつけられないかな〜と画策。

 

そこで制作したのが、【創作BLオンリー関係性自論5】限定オマケ『ひかりへ』になります。

 

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5000文字程度の短編が収録された文庫サイズのコピー本で、最後の方に本編後の伊咲と紫陽花のシーンが入っています。

 

 

限定オマケなので詳しい内容はあんまりお話できないんですが……二人の精神的な距離がきちんと近づいていて、作者としてはとても感慨深かった……!

 

特に伊咲。

 

彼は本当に成長したし、紫陽花に対する気持ちも、彼の中でなにか変化があったんだろうなと伺える言動をしてくれました。

 

一方紫陽花は、まだ伊咲の変化を受け止めきれない感じもあって。そのすれ違いがまた、個人的にはとてもツボというか。

 

本編後の二人の、微妙な距離感と想いを、なかなか上手く拾えたんじゃないかと思っています。

 

 

特にラストのシーンは、テーマである『救い』とも絡めて、少し宗教画的な美しさが出たらいいなあと思って書きました。

 

 

公募前提だった本編より一歩踏み込んだ、よりブロマンス的魅力がひきたつオチになった気がします。

 

 

『ひかりへ』【創作BLオンリー関係性自論5】限定のオマケになりますので、文学フリマでの購入やイベント外での通販購入にはついてきません。

 

noteでの有料公開は少し視野に入れてるんですが、あくまで『限定』オマケなので、そこそこのぼったくり価格にしようと思っています。

 

 

ですので、もし【神春伊咲の生業】の購入を検討されている方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ今回の 【創作BLオンリー関係性自論5】で手に取っていただけると嬉しいです……!

 

 

(ただのコピー本ではなく、デザインペーパーを使ってちょっと豪華に仕上げます。 紙の在庫的にデザインはランダムですが、必要な分だけ丁寧に作ります!)

 

 

◯ 【創作BLオンリー関係性自論5】のリンクなど

 

というわけで、自創作語り⑥【神春伊咲の生業】でした!かなり長くなってしまいましたが、語るだけ語れて私は満足です。

 

よくもまあ、自分以外に完成原稿を読んだことのない作品について、こんなに語れたなあと、自分で自分にびっくり……笑

 

ここまでお付き合いいただいた方がもしいらっしゃいましたら、本当にありがとうございます♪

 

 

私は基本的に『自作の最古参強火オタクは自分』タイプなので、自画自賛を不快に思った方には申し訳ない……でもあの、同人ってそういうものだと思ってるので!ここは私の庭なので!!許してー!!!

 

 

【創作BLオンリー関係性自論5】の瀬名のブースは、【全年齢Aこ12】になります。

 

 

・新刊『神春伊咲の生業』

 

の他に、

 

・既刊『ライン上のキッカ』(短編BL小説)

 

も用意しております!

 

(『ライン上のキッカ』について語った記事はこちら↓)

tsukimosakanamo.hatenablog.com

 

 

(お品書きはこちら↓)

 


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二作品とも、カクヨムで試し読みできます↓

同人誌試し読み(瀬名那奈世) - カクヨム (kakuyomu.jp)

 

 

 

【創作BLオンリー関係性自論5】の詳細リンクも載せておきますね♪

 

 

https://pictsquare.net/wiuib6plg5g1u7rjxgrawkwkklxkpq53

 

期間は【 8/23(金)23:00〜8/25(日)22:50まで】

場所は【pictSQUARE】(入場無料)です!

 

 

実は今回、私の同人活動史上、初の参加となるウェブオンリーイベント

 

 

瀬名は文学フリマ東京にしか参加していないので、この機会に遠くの方とも交流できるのかな?とワクワクしています!

 

 

瀬名の作品の他にも、たくさんのステキなブロマンス・BL作品が集まっております。当日お時間ありましたら、ぜひ覗いてみてください♪

 

お待ちしてます〜!!